2人は、心を落ち着かせて、改めて穴を覗き込み、遺体の数を数えた。
父親以外は、セスナ機の乗員乗客に間違いないらしく、15人の遺体の、30の瞳が、薄暗い水面から、2人を見つめていた。
2人は、自分たちが所属する、山岳警備隊の事務所ではなく、警察へ連絡を入れた。
そして、遺体搬出のヘリコプターを要請した。
間もなく、斉藤隊長から、連絡が入った。
「矢口君、何故私にではなく、先に警察へ連絡を入れたんだ!」
斉藤は“俺の立場を考えろ!”と、言わんはわかりに、怒っていた。
「隊長!怒る前に、自分のやった事を、胸に手を当てて、考えたら良いんじゃないですか?」
「な、何んだと!どう言う事だ!」
斉藤の怒りは頂点に達していたが、矢口は付け加えた。
「あんたも、こっちへ来たら分かるよ!自分が仕上げた地図を頼りにな!」
矢口は、吐き捨てる様にそう言うと、無線の電源を切った。