―…名前何て言うの?
「……リリィ。」
変わった名前だね。―もしかしてハーフなの?
「…………。」
会話にならず隼人も少し焦る。
―困ったなぁ〜
長い沈黙が続く中、ゆるい風がまたあの香りをのせて隼人の心をくすぐらせる。
「リリィさぁ、香水か何かつけてんの?
俺、結構この香り好きだなぁ」
「……え?」
今まで地面ばかり見ていたリリィが急に目をまるくして隼人を見つめた。
「あなた…判るの?」
可愛い表情ながらも少し不気味に見える笑みに隼人は大きく唾を飲んだ。
そして小さく頷いた。
「嬉しい!!」
突然リリィは隼人に抱きついた。
「…私の仲間見つけた…」
そう耳元で囁かれた隼人は抱きつかれた時に香る匂いであまりの居心地の良さに今にも我を失いそうになっていた。
意識を取り戻そうと必死になっていると
「私、夜になったらいつもこの公園にいるから、いつでも遊びにおいでよ…」
また甘い声で囁かれた後、隼人はついに気を失ってしまう。
―私もう一人になりたくないんだから…
ピピッ・ピピッ…
目覚ましの音が響く。
「………あれ?…家かぁ」
空はすっかり明るくなって隼人の部屋に朝日が眩しいほど入っている。
あの後どうやって家路に着いたのかさっぱり判らない。
気がつけばベットに寝ていたのだから。
うまく頭が回らず、髪の毛をクシャクシャにして昨日のことを整理している。
昨日のあれは何だったんだ?
…まさか…夢?
隼人は深く息を吐いた。
窓から入るすきま風にもうあの匂いは無いが隼人は風を感じリリィを思い出していた。
―またあの娘に逢いたい…ー
―続く―