「 」

 2009-09-19投稿
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黒革のソファー、分厚い医療本、院長室には高そうな物がズラリと並んでいた。


「紅茶はアッサムで良いかな?」

「あっ、私が…」

代わろうとしたら手で止められた。




今日ここに呼ばれた理由は自分でもなんとなく分かっていた。





「………ところで井原君、どうだね例の件は?」

院長は単刀直入に訊いてきた。

「いえ、まだです」

だから、私も率直な意見を言った。




残念そうな顔も、驚いた表情もしなかった。

まるで私の出す答えが分かっていたかのよう……



出されたお茶は丁度いいぐらいの熱さで美味しかった。








「井原君………君の熱意、いや決意は理解しているつもりだ。

分かったうえで君に勧めているんだ」



「はい」



「どうだろう、考えを変えてみないか?

あちらで最新の医療を学ぶ、そうすれば彼を治す方法が見つかるかもしれないじゃないか?」





「……………私には責任があります。



途中で『良くやった』なんて自己満足で終わらすことは出来ないんです。


誠に申し訳ありません。


院長には私の我が侭を聞いていただいているのに……」



そう、


すべては根元から間違っている。


だけど、私は無力だから何も出来ない。




「今年中にはお応えしたいと思っています」

「…………期待して待ってますよ」












「そうだ………今、彼はどれぐらい持つんだい?」









「…………一週間程度です」



温くなったお茶を飲み干し、井原は部屋を出た。



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