日もすっかり暮れ、普段ならば閑静な住宅街は穏やかな闇に包まれる時刻だというのに、山田邸の周りには投光器が何機も設置され、昼間のごとく煌々としている。
築き上げられたバリケードから3mほどのところには、いつでも突入できるよう機動隊が盾を構えて待機していた。上空には煽り立てるようなヘリコプターの爆音が、我が家のほうにまで響きわたっている。
山田邸は一日中不気味な沈黙を守っていた。
バリケードと睨み合う警官隊。隣家の異常事態に、休みだというのに落ち着いて過ごすことなんてできやしない。
「山田さん家、どうしちゃったのかしら?」
夕飯の準備をしながら心配する妻を後目に、突如確信めいた予感が過ぎった。
「きっと、今夜が山だ」