大嶋くんと出会う確率の高い時間に、学校を出る。
すでに心臓がバクバクと大きく波打っている。
こんな状態でちゃんと気持ちを伝えられるのだろうか…
たまに後ろを振り返りつつ、歩く。
でも、もしかしたら前を歩いてるかも知れないし…そう思い、速く歩く。
それをしばらく繰り返していた。
「廣瀬ーっ」
後ろの方から声が聞こえ、振り返ると木村くんが私の方に走ってきていた。
「はぁはぁ、廣瀬も、今帰り?」
息を切らしながら木村くんが笑顔で尋ねる。
木村くんとはすぐそこの曲がり角までしか一緒じゃないのに…走ってきてくれた。
「うん…。木村くん今日は遅くまで練習だったんだね」
「うん!展示会近いからね。大嶋に負けてらんないよ」
「…そうなんだ」
ゆっくり、ふたりで歩く。
あれ?
この間の曲がり角で木村くん曲がらない…。
「木村くん、家向こうじゃなかった?」
木村くんが真面目な表情で私を見る。
「廣瀬が好きな奴って、大嶋だよね」
「え…」
一気に顔が熱くなる。
なんで?
なんで木村くんが…
恥ずかしくて顔が上げられない。
「だって俺、ずっと廣瀬のこと見てたんだもん。見てれば分かるよ。この間、3人で帰った時も…廣瀬、大嶋に対して態度違うしな」
「……」
「廣瀬が困るようなこと、俺何もしないよ。廣瀬の力になりたいだけ。廣瀬が望むこと、叶えたいだけ」
ゆっくりと顔をあげて、木村くんを見ると、まっすぐな目で私のことを見てくれていた。
「…ありがとう」
素直に言うことができた。
続く