毎日繰り返される淡々とした陳腐な日常生活。
そんな永遠と続くこの不条理でありきたりな生活を明け暮れる私達、人々。
主人公、正志はそんな世界から脱出しようと考えていた。暇な時があっては空想し、行った事の無い世界へ飛び出そうと妄想にふけるのだった。
アフリカのサバンナでサファリをする夢、ラスベガスの高級ホテルベラッジオでの一獲千金を賭けたギャンブル、グレートバリアリーフの白いビーチを走り回る夢など考える事は多種多様だ。
彼の仕事は都内の店で美容師として働いている。
注文の多い客、どうでも良い事をベラベラ話す客、だんまりな客、そういった人々と毎日顔を会わせなければ行けない日々。
「思っていたのと違う。僕の描いていたのはこんな人生では無かったはず。何処でどうしてこんなにも変わってしまったんだろう?」と嘆く正志。
彼の夢は25で結婚し、子供を男の子と女の子一人ずつ持つ事、そして一年に数回海外へ足を運ぶ事など。しかし、彼は今29で今年の11月には30になる。明らかに自分の目標とは異なる。それに現在、彼女はいない。26の時に3つ年上のエステティシャンの彼女と別れたきりご無沙汰無しだ。
その上、23の時にグアムに行ったきり海外にも行ってない。
正志は今日も最後の客の髪を切り終えると、店を閉めた。今では美容室アンジェリークの店長補佐だ。自分の店を持つ日も近い。「木下、今日仕事終わったら飯でも食べにいこうぜ。」 「大丈夫ですよ。正志さん、明日からの週末二日間有給休暇なんですね。羨ましいな」
「あー。最近忙しくて休んで無いから少し気持ちのリセットをしようと思ってな。」
それから正志と後輩の木下は店を出て都内にある韓国料理店へ向かった。