目が覚めた…何だか身体が重くてダルイ。ダルイ身体を起こして、会社に出社する支度を始めようとした時、女の声がして怒られた。
「寝てなきゃダメ!」
ベッドから半身身体を起こした状態で声がする方向に顔を向ける。そこには…別れた女、俺が惚れている女で彼女の『真美』がいた。
「真美…」
少し擦れた声で名前を呼ぶ。喉が痛い、どうも俺は風邪を引いているようだ。
「無理しないで、熱が下がったばかりなんだし。大人しく寝ていてね、お腹が空いたらお粥食べて」
真美は俺に微笑みながら言った。彼女の笑顔は眩しく、俺は彼女の笑顔を見ていた。どんな薬よりも、愛しい女の笑顔はどんな病気に対してでも特効薬になる。
俺が見つめている事で真美の頬が少し赤くなっている。そして、彼女は嬉しそうな表情で言った。
「こんな事言うのもなんだけど…やっと真美って、名前で呼んでくれた」
俺の脳裏に同じ事が映像の様に浮かぶ…そうだ、俺と真美が付き合い始めて3ヶ月の頃だ…俺は風邪を引いて、真美が見舞いに来てくれた。付き合い始めた頃は恥ずかしくて、嬉しくて、真美の苗字にさん付けで呼んでいたんだよなァ…。
「涼…知っている?風邪って、移すと早く治るって」
「そうだけど…」
「私に移して」
「真…」
彼女の柔らかく艶やかな唇が俺の唇を奪う…甘い、キスだった…。