優の町には秋に神社のお祭りがある。
履きなれたスニーカーで家を飛び出して、友人と着いた神社で、優は溢れる光に目を奪われていた。
ところせましと並ぶ屋台。走り回る子供たち。
どことなくこもっている空気。
ふたつ縛りの少女が優に話しかける。
「村上君来てるといいね!」
「…っ!な、菜摘…あんまり言わないでよね」
実を言うと、図星なことを言われてしまい動揺した。
ショートの少女も言う。
「ははは…優は分かりやすいなー。さっきからキョロキョロしてるのは、やはしそうだったのだな」
菜摘も笙子も、中学に入ってからの友人なのだが、あっさり優は見破られてしまうのだ。
だが、お目当ての少年はまだいないようだった。