「ただいまー」
と誰もいない部屋に
つぶやいてみる
返事があったら恐いけど
コンビニで買ったものを
冷蔵庫に入れる
缶ビールを取り出し
テレビをつける
不意にあの手紙が
目に入った
すっかり頭から
抜けてた
なんかめんどくさ
書いた本人は
まさかこんな
だらしない男のもとに
届いてるとは
思ってもいないだろう
俺もたくやなんだけどな
あの卓也には
きっともっと多くの
ファンレターが届いているのだろう
こんな一通くらい、
どうでもいいだろ
俺はなんとなく
その封筒をあけた
beat 中野 卓也様
封筒と同じように
かわいらしい字がならぶ
内容はファンレターによく
ありがちな
あなたの曲を聞いて
救われただとか
この曲がすきだとか
書かれていた
どうやら女子高生らしいが
学校には行っていないらしい
それらしいことが
書かれていた
どうせいじめにでもあって
それでこのバンドに
救われたのだろう
俺はしばらく手紙を見つめ
馬鹿なことを思いついた
返事を書いたらどうだろう