普段は触れることもない
引き出しをさぐり
たまたまあった
シンプルな便箋と封筒を
取り出す
ソファーに戻り
なるべく丁寧な字で
斉藤 愛 様
と書き出した
なんて書き出そう
とりあえず
手紙ありがとうかな
俺は嘘をついた
玉置 拓也 じゃない
beatの中野 卓也に
なりきった
どうして学校に行かないの?
いじめられたとか?
俺らの曲を聞いて
元気になってね
なんてそんなことを
淡々と書いたら
便箋が一枚半埋まった
きっと相手は
返事がくるとは
思ってもいないだろう
ファンレターなんて
数えきれないほど
もらってるだろうな
でも、
なんであいつなんだよ
別にあいつみたいに
ファンレターを数え切れないほど
もらいたいわけじゃない
俺はただ音楽で
この歌で生きて
いきたかった
こいつらみたいに
キャーキャー
言われたいわけじゃない
ただ、
純粋に世の中の
どうしようもない奴らを
歌で救いたかった
ふっと笑ってみた
俺は何やってんだ
この返事を受け取った
女子高生はきっと
喜ぶんだろうな