彼女、斉藤 愛 は
高校1年生になった春、
病気が発覚したらしい
新しい教科書、クラス、
そして友達
希望でいっぱいだったはずの
彼女の高校生活は
退屈な入院生活に変わった
俺はしばらく迷った
返事を出さない方が…
悩んだまま
俺はいつもの
バイト先に向かった
――あなたの書く歌、詩は
いつも夢をくれます
ずっと応援してます――
帰ってきた時、
俺の手には
新しい封筒と便箋の入った
ビニール袋が握られていた
このまま騙して
ばれたとき彼女は
傷つくだろう
でも今だけでも
少しでも
生きる希望になるなら
返事を書き終えると
俺は久々にギターを
手にとる
少し埃っぽいギターを
チューニングし
弾きはじめる
次から次へと
言葉が浮かぶ
気づいたとき、
カーテンの隙間から
朝の光が漏れていた
そして完成したばかりの
詩とメロディーが
目のまえの紙の上に
並んでいた