――『俺、バンド抜けるわ』
『はあ?!何言い出すんだよ』
俺は冗談だろ、と笑った
『急になんだよ、和也』
傍にいた直人も笑っていた
でも、和也の顔は
真面目だった
ドラムの真治だけは
和也の本気を
察したのか落ち着いた声で
『どうした?』
と短く聞いた
『卓也のバンドがね、
あ、おまえじゃねえよ?
中野のほう。
あいつがね、
ギター探しててさ…
俺、このバンドで
絶対、夢つかめるって
信じてたよ
でも、こっちで
夢目指すより
あっちのバンドの方が
絶対力あるっていうか…』
何言ってんだよ
気づいたらつかみかかってた
和也も大声を出した
『こっちじゃダメなんだよ!
いつまでたっても
ちっとも進めねえ!!
お前の歌じゃ無理なんだよ!』
俺は何も言えなかった
和也に殴りかかったまま
睨み続けた
『拓也…放してやれ』
しばらくの沈黙のあと
真治が口を開いた
その1ヶ月後、
beatのメジャーデビューは
決まった
俺らのバンドは
夢に破れた――
ピンポーン
知らぬ間に眠っていたらしい
俺はチャイムの音に起こされ
ソファーの上で目を覚ました