朝はやく俺は
真治の家にいた
真治は眠そうに俺を
迎えいれた
俺は聞いてほしいとだけ言い
あの曲の入ったMDをかけた
真治はだまったまま
一点を見つめていた
聞いているのか
何を考えているのかも
わからない
曲が終わり、
俺は不安を感じながら
話した
「…もう一度……
ドラム、叩いてくれないか…
…俺もう一回、
夢を信じようと思うんだ」
真治は相変わらず
表情を変えなかった
ただ一言
「…いいよ」
と、答えた
そして俺の目を見て
あきれた顔でほほえんだ
俺らはまた夢に向かって
走りだした
俺は愛にお礼が言いたかった
でも自分を偽っている限り
それはできないことだった
俺が本当のことを話せない
もどかしさに悩んでいる間に
少しずつバンドは前進していた
「今度のライブで
君たちの曲を
聞かせてもらいたい」
そしてついに
チャンスがめぐってきた