次の日、スグルくんはいつものように電車に乗ってきた。
いつもの変わらない姿で。
私は違和感のないように聞いた。
「昨日は風邪をひいちゃった?」
スグルくんは慌てたように
「違うよ〜!」
と否定。
「昨日は法事だよ。」
私は
「そっか…。」
と答えた。
そして思い切って聞いてみた。
「スグルくんの家ってもしかして複雑?」
人の心の中にある爆弾を踏むような質問にスグルは
「複雑かぁ−。
そうかもね。
両親離婚しているし。
親父は海外赴任しているしね。
おふくろは男と駆け落ちしているしね。
そのせいで親戚からは白い目で見られているから。
昨日の法事は気疲れしたよ。」
スグルくんはさらりと話した。
あまりにも自然に笑顔で。
だから、私は逆に心配になった。
スグルくんの今の環境はそんな楽しそうに話すことではないのに…。
それを慣れているように話した。
「泣かないで。」
スグルくんに言われて気付いた。
私は涙を流していた。
「俺は平気だから♪」
そう言って笑うスグルくんの姿がより一層、私の心に深く悲しみをあおった。
私は思わず
「スグルくんはいつ泣くの?
誰に泣けるの?
スグルくんは…。」
私の言葉にスグルくんは困った様子だった。
そして言った。
「たぶん、俺は人を愛せないんだろうね。」