誰も愛さない人を愛する私【8】

唯沙  2009-09-23投稿
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次の日、スグルくんはいつものように電車に乗ってきた。

いつもの変わらない姿で。

私は違和感のないように聞いた。

「昨日は風邪をひいちゃった?」

スグルくんは慌てたように

「違うよ〜!」

と否定。

「昨日は法事だよ。」

私は

「そっか…。」

と答えた。

そして思い切って聞いてみた。

「スグルくんの家ってもしかして複雑?」

人の心の中にある爆弾を踏むような質問にスグルは

「複雑かぁ−。

そうかもね。

両親離婚しているし。

親父は海外赴任しているしね。

おふくろは男と駆け落ちしているしね。

そのせいで親戚からは白い目で見られているから。

昨日の法事は気疲れしたよ。」

スグルくんはさらりと話した。

あまりにも自然に笑顔で。

だから、私は逆に心配になった。

スグルくんの今の環境はそんな楽しそうに話すことではないのに…。

それを慣れているように話した。

「泣かないで。」

スグルくんに言われて気付いた。

私は涙を流していた。

「俺は平気だから♪」

そう言って笑うスグルくんの姿がより一層、私の心に深く悲しみをあおった。

私は思わず

「スグルくんはいつ泣くの?

誰に泣けるの?

スグルくんは…。」

私の言葉にスグルくんは困った様子だった。

そして言った。

「たぶん、俺は人を愛せないんだろうね。」

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