ジュースを飲み干したスティーブは、キッチンからリビングへと歩いていく。
「そういえば、アンディとメアリーは?」
辺りをキョロキョロ見回しながら、ジュリーに尋ねた。
「そこのソファーで寝てるよ。ずっとゲームしていたわ」
ジュリーが指差すソファーには、案の定寝息をたてているメアリーとアンディの姿があった。
窓から吹き抜ける風を存分に浴び、心地良い寝顔を浮かべている。
「アンディ可愛いなぁ。メアリーも、天使みたいだ」
彼は呟くと掌でアンディの頭を優しく撫で、メアリーの頬にキスをする。
その後も、スティーブは愛情の籠もった眼差しでメアリーを見つめた。
その瞳はまさしく、彼女に“愛してる”と言っているようであった。
「姉さん、煙草買いに行くよ」
スティーブは視線を2人から、ジュリーに移す。
「ああそうだ。ついでにビールも買ってきて」
「ビール? ああ分かった」
ジュリーからビールの代金を預かり、彼はポケットへと仕舞った。
「車貸そっか?」
「いや、良いよ。スーパー直ぐそこだろ? 歩いていくよ」
スティーブはジュリーにそう告げ、スーパーに向かっていった。
(ふぅ…。せっかく忘れていたのに、あの夢の所為で思い出してしまったぜ。くそっ…。何故今になって…)
道中、彼は頭の中で色々な思いを巡らせていた。
…思い出したくない過去の記憶。
それが蘇った事により、彼の心は大きな重圧感で満たされた。
それと同時に、自分に迫る身の危険を僅かながら感じ始めていた。
(バカだなぁ。こんな所を連中に見つかれば、一発で終わりじゃねぇか…)
そんな彼だったが、気付けばスーパーの前に立っていた。
続く