「す、すごいっ。シン君だって4段目が限界なのに…あっ、僕、勇太。えっと君は?」
その女の子はニッコリ笑うと、
「私は夢香(ゆめか)よ。ところでユウタのユウは、勇気の勇?」
と聞いた。
「う、うん(なんで家の親はこんな名前付けたんだよ!)」
「ヘ〜ピッタリな名前だね。」
「へ?…ああ、もっと勇気を付けろって意味なら、ピッタリだね…」
「ちがう〜」
勇太は、夢香にいきなり両手でほっぺたを押さえられ、夢香の顔が、どんどん近づいてくる…
…バクバク…心臓の音が聞こえる。
勇太は「な、なに?」と、
裏返った高めな声で聞いた。
「勇太君は私なんかより、勇気あるよ。」
「へ?どこが?一段目に上るのも怖いんだよ。」
夢香は勇太から手を離し、再び五段目まで上ると、そこに腰掛けながら
「勇気ってさ、怖いものや強いものに立ち向かう ‘心,の事だと思うよ。
私や皆は怖いって思ってないから…よっと…」 そのままの姿勢で飛び下りてこう続ける
「…飛べるのよ。だからシン君って子も、五段目は怖いから挑戦しないんじゃない?…でも勇太君は違う。頑張って怖い物に立ち向かってるもん。凄く勇気があると思うわ。」
「夢香〜、帰るぞ〜。」 「あっ、パパだ、行かないと…じゃあね勇太君。」小さくなっていく夢香の後ろ姿を見送っていると 「しまった!お礼も言えなかった!(にしても可愛かったな…)…夢香か…
やばっ。僕も帰らなきゃ」
続く