―『ゆかぁー!』
勢いよく開いた扉とともに
病室に愛の声が響く
私は彼女を見てつい笑顔になる
彼女はベッドのそばに
いつものいすをよせ、
いつものように座る
愛はいつも朝から
この病室にやってくる
『今日もお母さんに怒られてん!
いつ学校行くつもりなん?
やってさー
学校なんて行っても
なぁんもないし
おもんないやん
あんなんサボるべきやって』
私が何も言わなくても
彼女は一人で喋り続ける
これが私にとっては
ありがたい
『ゆかの病気がなおって
学校に来てくれたらいいのになあ』
私は知っていた
彼女が学校に行かないのは
面倒だからじゃない
それでも私は何も言わない
『ゆか、絶対元気になってな
うちがこーんなに願ってんねんから
絶対治んで!』
神様、ほんまお願いやで
ゆかの病気はよ治さんと
許さんへんからな
彼女はぽつりと呟く
私も願う
ほんまにお願いや
神様、 うちを治してください
ううん、治らなくてもいいから
彼女をまたまえみたいに
笑わせたい
彼女の力になりたい