知ってるよ。
この道を曲がったところに
あなたが好きなひとがいること。
でも、あなた知らないでしょ。
あたしがこの角を曲がるとき
いつも深呼吸してること。
――…?…――
『なんでこの道好きなの?』
鈍感な君は、いつも私を困らせる。
『だって、ほら…車通らないから…静かで…』
朝1番に君におはようって言ってもらえるから。
言えるわけない。
『そっかぁ。俺もこの道静かで好きなんだ。』
『うん。』
知ってるよ。
この曲がり角に
あのひとがいるから。
『あ、ヨシおはよう!』
『おはよっす。』
ほら。
『あ、亜美ちゃんおはよう。』
なまえを呼ばれてから、あたしは笑顔で挨拶した。
『おはようございます。』
鈴木君の憧れの人。
泉 紗季先輩。
名前が彼女を物語っているかのようだ。
『鈴木君、どうしたの?ぼーっとしてる。』
『えっ!』
『あたしそんなに綺麗かなぁ?』
うん。綺麗。