駅前広場の一画にあるベンチで人を待っている。
横には巷で有名なゴスロリとかいう衣装に身を包んだ女の子。名前は知らない。
さっきからその子は厚めの本を読んでいて、綺麗な真っ白の細い指で膝の上に置いた本を押さえている姿が木陰の中のベンチと妙にあっていて、うらやましいなぁなんて思う。
はぁ。例えばこの子に話し掛けるなんていう勇気があったなら、こんなにどきどきしなくていいのだろうか。
今はちょうど夏と秋の中くらいで、そんな季節の変わり目には何か心踊る出会いがあってもいいんじゃないかって、そんなことを考えていたときだったから、あの子がどうしても気になってしまう、そんな昼下がり。