角砂糖が溶けていくように

紗弥佳  2009-09-24投稿
閲覧数[601] 良い投票[0] 悪い投票[0]

コーヒーを淹れた。
窓の外の街灯の白い光と夜の部屋の静けさが溶け合っている。
今は一人じゃないのに。
コーヒーに砂糖を一つ落とす。
わざと、とぷんと沈んでいく音がたつように落とす。
その音は少しだけ、私を「今」に留めさせてくれる。
茶色いコーヒーシュガー。
普通の角砂糖より大きくて、砕いた石みたいにごつごつしている。
なかなか溶けないから、スプーンを何度も廻す。
雨が静かに降り始めた。
スプーンを廻す手をとめて、目を閉じる。
誘われるまま、開いた扉の先に足を踏み入れるしかないみたいだ。
「大丈夫、戻ってこられるから。」
寝室のドアに目を遣ってそこで眠っている彼が居ることを思う。
今は一人ではないし、誰にも救えない孤独の中から救い出してくれた人がそこに居る。
分かっている。
でも、ときどき扉は開いて「忘れたわけじゃないよね。」と手招きをしてくる。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 紗弥佳 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ