あの時も雨が降っていた。
今と同じように静かに、細い糸みたいに。
真夜中の闇と街灯の白い光の中に溶けていくみたいに。
携帯電話が鳴る。
それを合図に私は部屋の窓の鍵を開ける。
窓の外には自分の彼氏ではない男の子が立っている。
私は目で、入ってきていいよ、と合図して窓を開ける。
一階の私の部屋の窓は小さいから体を丸めて私の部屋にやってくる。
そして、気がつけば彼の腕の中にくるまれている。
「傘、差してこなかったんだね。」
彼の制服のワイシャツは湿っていたけれど、昼間は馬鹿みたいに暑くて晴れていたからお日様のにおいもする。
同じ年頃の男の子の独特の匂い。
「急に降ってきたからね。」
クローゼットの中に掛けてある自分の制服は、彼の制服みたいなお日様のにおいはしないような気がした。
私はあまり、外に居ない。