愛が帰ったあとの寂しい病室
ふとベッドの横の棚の上に
手紙に気付く
愛、忘れてってるやん
明日また来るだろうからいいか
私はそのまま眠りについた
愛は確かに次の日も
病院にいた
見舞いじゃなく
患者として
私が愛の入院を知ったのは
その翌朝だった
あの日の帰り、
愛は事故にあったらしい
あの日から愛の意識は
戻らない
しばらく信じられなかった
病室のベッドに横たわる愛は
今にも目を覚ましそうなのに
私は気がつくと
愛が出すはずだった
あの手紙を手に
病院にあった
自転車を走らせていた
初めて抜け出した病院
久々に見た病院の外など
私の目には入らない
どうか、愛を助けて
赤いポストにただ願った
これだけの出来事を
数分で書きまとめるのは
難しかった
待たせないようにという
焦りで文字は乱れていたし
こんなメモじゃ
きっと理解できない
声を出せたなら
もっとうまく伝えられるのに
声を忘れた私は
何も言えない
それでも彼は微笑んでくれた