雨は相変わらず降り続いている。
電子レンジのデジタル時計が青白く浮かび上がっている。
真夜中。
一人でソファーに腰掛けている。
一人でコーヒーテービルとその上にちょこんと居座っているコーヒーカップとシュガーポットと向き合っている。
シュガーポットの蓋を開ける。
陶器がぶつかる涼しい音。
もう一つ、砂糖を小さなトングでつまんでカップに落とす。
砂糖が深い海に落ちていく石みたいに見える。
冷めてしまっているコーヒーの中に落ちて、なかなか溶けていかない。
コーヒーと砂糖が混ざらない。
一つになれない。
通じない、伝わらない、分からない。
そんな言葉が頭を過ぎる。
私はまだ、扉の中から戻ってこられない。