「あっ、そうか。照れるなあ」
音が響くゲームセンター内。2人の会話はもう、僕には届かない。
「…こんにちはお兄ちゃん。」
「…こんにちは」
声を掛けられたのは、スーツ姿の、いかにもゲームセンターには不似合いな若いサラリーマンぽかった。
「お礼にいいものあげる。ちょっと来てくれない?」「…いえ。今ちょっと待ち合わせしているので、ここでお願いできますか。」
そう言った途端、急に僕をゲームセンターから連れ出し、車に乗せられた。
「…ここで、なんてできるわけねーんだよ。兄ちゃん。」
今までの笑顔が嘘のようだ。車はどんどん走って、新宿に向かっているようだ。龍吾達とは全く正反対の場所だ。
新宿、歌舞伎町。
街にはきらびやかなネオンが輝いている。
14歳の僕は、絶句した。「どうだ。驚いただろう。」
「…はい…」
「オレの店に案内する。近道するからついてこい。」「はい。」
「はい」しか言えなかった。僕に最大の危機が迫る。
そこは、アジトみたいな所。部屋の中は煙草の煙で霞んでいる。
「…ここに座れ。」
「はい……」
「おい。こいつに売ろうってのか?」
「あぁ。」
「ガキじゃねぇか。」
「ガキだから持ってんだよ。たっぷりな。」
「あえて…か。」
アジトの中には、数人の若い男がおり、会話を楽しんでいる。
「さぁ。プレゼントなんだけど…」
龍吾と陽太は、トイレから戻ってきた。
「あれ?みーくんは?」
龍吾は真っ先にみーくんがいないことに気付いた。
「いない…」
陽太も不安になる。
「隠れてんのか?」
「…マジでいない…」
「…嘘だろ?」
龍吾は顔を曇らせた。
「とにかく、親に電話してみる。」
「おぉ。頼む。」
1人でも協力してくれたら…その思いでいっぱいだった。
「みーくん…どうか無事でいてくれ…」
すると、2人にもスーツ姿の男が近づいてきて、
「もしかして、友達をお探しかい?」
2人は何か知ってるのかと思い、歩み寄る。
「はい。知ってるんですか?」
「うん。こっちにおいで。」
龍吾は近づく。
「ん…?」
陽太はポケットからナイフが見えているのを確認した。そして、
「龍吾!こっちだ!」
男はナイフを振りかざしたが、何とか当たらずにすんだ。すぐにゲームセンターを出て、駐車場に向かった。
「おっ。陽太。龍吾くん。」
「とりあえずここ出て!」「わ…わかった。」
みーくん…何処に行ったのか…