うさぎは亀を待っている。
目を赤らめながら待っている。
亀は来ない、ずっと来ない。愛しの亀はまだ来ないの?
高鳴る鼓動を抑えながら耳を傍だてながら、亀の来る気配を感じようと岩の上でジッとする。
一年、二年、三年…。
岩の上で待ち続けたうさぎは切ない気持ちに充たされた自身の体を抱きしめる。
『どうして亀は来ないのかしら…』
涙がポロリ。
その雫が岩をつたって流れ落ちる。
「あ〜、よく寝た!」
突如、岩が声を出した。 うさぎは跳び上がった。 よく見ると、
岩は亀の甲羅だった。
亀は甲羅から首をニョキッと出して自分の背中にいるうさぎに気付き、
「おい、今からデートに行くぞ」
うさぎは「うん」
とだけ一言。
うさぎと亀は京都嵐山へと夕日をバックにデートに出掛けた。