「 」

 2009-09-27投稿
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空は爽快。


蒼さは都会の空気に汚されてもなお、その美しさは健全だった。


夏独特の生暖かい風が白衣を通り抜けると、病院の作られた空気とは違う、生きた空気を感じることができた。


そこで、その風の独占者に私は声をかけた。



「いくら病人ではないといっても、1日中ここに居たら熱中症にでもなってしまいますよ?」


「大丈夫ですよ、ここは大好きな場所ですから……」


「答えになってませんよ…」





………大好きな場所か…


景色を見つめているんだろうか、こちらを振り向いてはくれなかった。

私も世間話でも話せればいいのだけれど、生憎と私は世俗には疎くてそういうのは苦手だ。




「………今日だと…思うんだけど……いいのかい?」


胸を抉る様な言葉しか発せない自分が嫌になる。


「さっきまでここに居ましたから」


包帯を巻いた少女はベンチの端に移動した。






隣に座って良いってことかな?













「今年で10年ですね………何だかあっという間でした」




とても18歳の少女が言ったとは思えない重さがあった。

老婆には程遠い、しかし生娘はとうに追い越している、

そんな感じだ。







「ありがとう」


「何ですか?突然」


「いや、そうでもないよ。
いっつも感謝している、ただ口に出す機会がないから、今言わせて欲しい。




ありがとう」







「いいえ、私は私の好きなようにしているだけです。





白状すれば、私の我が儘に過ぎないんです。






だから、私は感謝されるような事はしていませんよ」







「そうか……



なぁシノハラ君、訊きたい事があるんだ」


「何ですか?」












「今でも彼が好きかい?」











「はい………





私はいつまでも、






どこまでも






裕クンが好きです」
















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