相変わらず愛は
眠ったままだった
俺の隣でゆかはいつも
幸せそうに笑う
それでも愛の病室を
訪れるとときどき
悲しい顔をする
“なんだか愛に悪い気がする”
彼女は前にそう言った
ゆかのためにも…
愛のために何かできないだろうかと
俺は考えた
そんなときだった
初のテレビ出演が決まった
その音楽番組は
毎週何組かのゲストが出演する
そのゲストのなかに
俺はbeatの文字を見つけた
その収録の日、
俺は彼らの控室を訪れた
入院してるその女の子のために
歌ってくれないか?
久々に見た卓也は
以前にも増して俺にはない
オーラを出していた
控室のすみでは
和也が申し訳なさそうに
俺を眺めていた
「でもその子、
意識ないんでしょ
歌なんか聞こえるのかよ」
「確かにそうだけど…
でも俺は音楽がもつ奇跡を
信じてみたい」
ばかなことを言ってるなと思った
笑われると思ったが
返ってきたのは
「わかったよ」
という返事だった
俺はずっと嫌いだったこいつが
すごくいいやつに思えた