閻魔界に着くと、以前とは違う、荒れ果てた景色がみわたされる。
「あれ…?場所間違えたか?」
「ここで合ってるだろ?あそこが閻魔の宮殿だもん…。」
指差し、互いに確認をとる。
「ハーン…。あれ…。」
エリンは僕の腕を引っ張り、目で合図をする。
目線の先には、めぐみさんが微笑んで手招きしている。
何か様子が変…?
「ハーン!めぐみの目を見るな!!」
後ろを振り向くと、死神が立っている。
「いつの間に…。」
「とにかく、閻魔の所へ急げ!」
死神のマントが僕らを包む…。
閻魔は力を吸い取られ、倒れていた…。
その場にいたのは…。
「秀明…?」
奈々ちゃんが震えながら呟く…。
奈々ちゃんの弟…。秀明…。
「姉ちゃん…。」
涙を流しながら、秀明は閻魔の横で座り込んでいた…。
僕とライアンは閻魔に近寄ろうとした…。
そうしたら、目の前にまためぐみさんが…。
「死神!!この女は何なんだよ!!」
「めぐみは…。多分操られてる…。もう死人だけど…。」
死人なのに操られている?
「消すしかない…。」
俯いた死神の頬から涙が流れた。
それを見たら急に胸が苦しくなった…。
それにしても、なぜ秀明がいるんだろう…。
身動きが出来ず、硬直した状態が続く…。
奈々ちゃんを見てみると、瞬きもしない状態で涙を流している…。
「う…うそでしょ…?秀明…。あなた………。」
言いかけた時、秀明の表情が変わり奈々ちゃんを襲う。
ライアンはすぐに助けようとしたが…。
遅かった…。
それは一瞬の出来事だった…。
姉である奈々ちゃんを、弟の秀明が噛み付いた。
まるで吸血鬼のように…。
「奈々!!」
ライアンは秀明にかかっていく。
僕は、めぐみさんと死神の間に挟まれ、身動きが出来ない。
「ジョージ…。あたしはあなたを…。」
「何も…言わないで…。めぐみ…。もう…。」
死神は首斬り鎌を出し、フラフラとめぐみさんのそばに寄る。
「死神…。」
僕が話しかけても、僕を見ようとはしなかった。
真っ直ぐにめぐみさんを見る死神…。
鎌を首元へ構える。
死神の瞳は、涙が溢れすぎて何も見えないでいるに違いない…。