先に、さっきリョウがユウと偶然会ったと言うコンビニに立ち寄ってみたが、
ユウの姿は無かった。
こんな田舎で、若者が集まりそうな場所と言えば、ゲーセンくらいしか無いだろう。
この辺でそう言った場所は、ひとつしかない。
俺は、再びママチャリをこぎ、目的地を目指す事にした。
日頃の運動不足がたたってか、坂の多いこの街で、自転車をこぐのもひと苦労だ。
『ハァ…ハァ…ハァ……ハァ………。』
目的地に着く頃には、息が切れていた。
着いた場所は、駅と直結している複合商業施設だ。
食品売り場や、衣料品売り場、各テナントは、すでに閉店していたが、
娯楽施設は、夜12時まで営業していた。
とりあえず、この中にあるゲーセンやボーリング場、カラオケボックスなどを当たってみる事にした。
自転車置き場にママチャリを置き、
いざ施設内へと思った瞬間だった――
『お前、俺らをナメてんのか?!
こンなんじゃ足りねぇッッつってんだろ!!』
広い屋外駐車場の片隅に設置された、小さな自転車置き場に立つ俺の背後から、
突然、若者同士のトラブルを想像させる罵声がした。
『そんな大金無いですよ!!
それが、今の全財産です!!』
駅直結型の複合商業施設ゆえ、
屋内駐車場や、駅から施設入り口までの、連絡通路を利用する客が大半であり、
この時間帯の屋外駐車場はひと気が無く、
辺りは閑散としていただけに、
その声は、周囲に非常によく響いていた。
全く近頃の若者は、ひどいもんだ。
うちのユウも、あんな風になる前に、更生させなければ。
触らぬ神に祟りなし――
俺は、その声のする方を見ないように、素通りする事にした。