石田と、和枝の成り行きを、見届けた勇一と幸子は、それぞれ、心の中で、由美と利夫に問いかけた。
「これで良かったんだよな…由美」
「これで、いいんだよね、…利夫」
2人の思いは、届いていた。
(女)「…思い出した。あの曲。やっと、わかりました。私…私は、嶋野由美だったんですね?」
(男)「そうです。そして、僕は、奥村利夫です。由美さん、僕は死ぬ前に、あの店長さんから、聞かされたんんですよ。あなたの存在を…そして言われたんんです『もし、運命があるとしたら、きっと、君は、彼女に出会うだろう』と」 「私と?それじゃああなたは…」
「ええ、2人とも、お互いの大切な人に、手紙を渡す期間を設けてしまった。だから、2年間、僕は、ここにいたんです。いずれ、僕も、記憶がなくなってしまうかもしれません…でも良かった。」
「あなたは…あなたはもしかして」
「そうです。僕は、待ち続けていたんです。あなたを」
「私を…さまよい続けていた私を」
「ええ…。僕達は、大切な人へ、時を越えて、手紙を託してしまった…2人の幸せをあなたと見届けたかったんです。…すみません」
謝る男(利夫)に、女(由美)は首を横に振った。
「ありがとう。こんな私を待っていてくれて。そうだよね。お互い、勇一と幸子さんの幸せを見届けなきゃいけないですよね?…そして、兄と、紀子さんのことも…」
「ええ…。僕達は、死の運命を受け入れるしかなかった。でも、生きている時に、わがままを聞いてくれた2人を、未来を見届けよう。そして、この場所から、新たな1歩を踏み出していこう」
「はい。この先も、きっと、さまよい続けていくかもしれません。でも、2人なら、道は開けるかな」
「ええ…きっと。
ところで、勇一さんへの、3通目の手紙は、何て書いてあるんですか?」
「それは、今からわかりますよ。だって…私達が運命だったように、勇一と幸子さんも、運命に、手繰り寄せられたんだから…」
「そうですね。じゃあ、見ましょうか?」
2人は、頷き合いながら、下を見た