午前10時、彼らは家を出た。正志の車でお台場まで向かった。ちょうどお台場まで30分というところか。彼らはフジテレビ局を見学し、アクアシティでぶらぶらお買い物をし、浜辺の見えるカフェでお茶をした。
「エスプレッソとアメリカンで。」と正志はオーダーした。
「あなた、宇宙人って信じる?」唐突にかぐや姫は質問した。
「そんな物は信じないよ。テレビではよくUFOやミステリーサークルなどと言ってるけど、あれは全部ヤラセだよ。宇宙上には我々人間しかいないんだよ。第一、他の惑星に人が住めると思うかい?」と得意げに語る正志。
「おそらく、普通の世界では宇宙人なんていないのかもしれない。でも、あなたと私が踏み入れたこの世界なら彼らは存在するのよ。」意味深げなかぐや姫の発言に正志は困った表情をした。
「君が言う、このパラレル・ワールドには宇宙人は存在する。そして、もう一つの普通の世界では彼らは存在しない。つまり、何か普通の世界とこのパラレル・ワールド、次元みたいなものが違うという事なのかい?」
「まあ、その時になれば分かる事よ。」と言い、かぐや姫はエスプレッソを口に含んだ。オーシャンビューなこのカフェから正志は東京湾を一望した。が、しかしふと浜辺に目をやると何だか妖しい服を着た人物が海を眺めながら立っていた。
「かぐや姫、あそこに何だか妖しいおっさんが何かコスプレしてるぞ。何だ、あれ?」
「どこ?あぁあの船長さんみたいな格好をしている男の人ね。もしかしたら、あなたと何か関係あるかもしれないわ。」正志はアメリカンの入ったカップを皿の上に置いた。
「待てよ。俺にあんな変人みたいな知り合いはいないし、コスプレ野郎なんて見ただけでも気持ち悪い。」と不機嫌そうに言った。
「彼はきっと私たちを待ってるわ!あなた、キーワードをよぉく思い出してみらっしゃい。」
「キーワード、海賊。待てよ、彼がキーワードの海賊なのか?」と疑わしげに言った。
「多分そうよ。彼は船長よ!」と自信げにかぐや姫は言った。
二人の間に不思議な空気が流れた。