すると鱒浦は少し引き攣った笑顔を見せると何も言わずに家に入って行った。
あの雄弁な鱒浦が話さないとは……何だか相当のトラウマがあったみたいだ…。
わたしは町を徘徊するトラウマの原因達に見つかる前に家に入ろうと急いだ。
家の中はおおざっぱな鱒浦にしては意外と綺麗だった。
ごくごく普通の家だ。
……あの部屋以外は。
しかし普通が打ち破られるのは早かった、鱒浦はさっきの引き攣った笑いとは違うにぱっ、とした笑いを見せると言った。
「さあさあ、家の中は動き回らない!何で家に泊まるのかは後で聞くから研究室へ行くぞ!」
そしてわたしはため息をつく暇も無く、鱒浦に引きずられて行った。