ボンヤリと天井が見える…見に覚えがある天井…俺の部屋の天井だった。上体を起こして周りを見る。薄暗い室内は静かだった。
トランクス一枚の姿で起き上がり、腹が空いているので台所に行く事にした。部屋のドアを開けて部屋を出る。
「きゃあ!!」
後ろで女の声がする。後ろを振り向くと、若い女が居た。
女の悲鳴を聞きつけて、階段を勢い良く駆け上がる足音がする。
「兄貴!そんな格好で歩くなよ!!」
俺の弟の『隆弘』は怒った口調で言ってきた。
これって…2年前の事じゃないか…時間が逆行している。
弟の隆弘は中学の時から付き合っていた彼女と結婚したばかりだった。
アイツの嫁さんの名前…千佳と言ったっけな?
彼女は顔を真っ赤にして、俺を見ない様に後ろを向いている。
弟は俺に説教している、五月蠅ぇなぁ。二階が騒がしいと言う事で、両親が二階に上がって来ていた。
「涼…呆れた子ねぇ。千佳ちゃんの前で、そんな格好しないで頂戴」
一人五月蠅いのが増えた。お袋と弟でダブル説教された。
そうだ、盆の時に俺が実家に帰った時にあった出来事だった。
何で時間が逆行してんだ?あの、占い婆を探し出して元に戻して貰わないと気がすまない。
この状況、何とかならんのかなぁ…お袋の説教よりも、弟の説教の方が長いんだよなぁ
「兄貴!」
「涼!」
「聞いているの!?」
二人の声がハモった。