アキ 1

ゆう  2009-09-30投稿
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この話は誰にも言っていない。

親友にすら、言っていない。


私だけの秘密…。




山科透。
33歳。
現在、絵画教室の講師として働いている。
毎週水曜日、午後1時〜4時まで。
人付き合いが下手な私にはちょうどいい。

そう思っていた時に、彼が現れた。



金髪にピアス…
身長180センチあるだろうか…
今時の男の子…
苦手なタイプだ。

この子、教室間違えてるんじゃないかな…

「あの、どうされました?」
「あ、俺、今日、絵画教室の体験で申し込んだ名波です」
「!…名波アキさん?」「はい」

今日、体験でひとり来るとは聞いていたけど…名前からして女の子が来るのかと思ってた…。

「どうぞお入りください」
「ども」
「今日は体験ですので、教室内にある好きなモチーフを選んで、デッサンしてみてください」
「分かりました」


申し込み用紙に目を通す。
名波アキ。
21歳。
K大学3年。
デッサン希望。

K大…医療系大学だ。
芸大とかではないのね。
この子、どんな絵を描くのかな…。


ふと彼の方に目をやると、彼は私の方を見ていた。

「何を描いてるんですか?」
「あなた」
「え?」
「先生を、描いてます」「!」

彼のスケッチブックを見ると、この短時間で私が申込書に目を通している姿が描かれていた。

力強い線。
殆どが迷いのない一筆書き。
彼の芯の強さを表しているようだった。


この時の感情を、何と言ったらいいのだろう。

一気に彼の絵に、魅せられてしまった。




アキとは、こうして出会った。



続く

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