「先生の下の名前、なんてゆーの?」
絵画教室に入った名波アキは屈託のない笑顔で聞いてきた。
「透。透き通るの透」
「先生にピッタリの名前だ」
「そうかな…男みたいだよ」
すっかり名波アキは教室に馴染んでいた。
見た目と違い、気さくで明るく、人なつこい性格だった。
「アキちゃん、アメあげるよ」
「ありがと!シゲさん♪」
いわば、教室の人気者となっていた。
教室を利用している定年迎えたおじいさん達ともすっかり仲良くなっていた。
「透さん!」
「名前で呼ぶのは禁止です」
「透せんせっ」
「…はい」
「今度、展示会に出す絵のモデルになってもらえませんか?」
「えっ!そんな無理ですっ!」
慌てて私は言った。
「なんで?」
「他の人に頼んでください!」
「いいじゃない。モデルやってやんなよ」
さっき名波アキにアメをあげたシゲさんが会話に加わる。
「そんな…茂田さんまで」
「やってよ先生!お願い」
「………」
名波アキは上目遣いで私を見た。
続く