梨花と何か話すきっかけが欲しかった。
その時の僕は単純に、妹くらいの年齢の女の子がまわりの他の女の子のように、友達と他愛ないおしゃべりをして笑っている姿を見せない梨花をどこか心配に思い、余計なお世話だと思われても、そういう姿を見せて欲しかった。
僕には梨花と同じ歳の妹がいて、その妹と全然違う梨花を何とかしてあげたいと思った。
今思えば、多分それだけじゃない。
正直に言えば、綺麗な女の子の笑顔を引き出したいという思いもあったのかもしれない。
梨花は、どこか自分で煉瓦を積み上げて塔を作って、そこに誰も踏み込ませず、自分一人の聖域に閉じこもっているように見えた。
「一緒にしないで、私はそんなに単純じゃない。」と必死で何かに抵抗しているみたいだった。
妹と同じ歳の梨花を恋愛の対象にするなんて僕にとってはありえないことだった。
いくら梨花を綺麗な女の子だと思っても単純にそう思うだけに留まっていた。
そんな自分を、ただのお節介な兄の目線になってしまっているだけだと思った。