チンゲンサイ。<23>

麻呂  2009-10-03投稿
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『ヒイィィィ―――ッッ!!

だ、誰か‥たっ‥助けてッッ!!』


悲痛な叫び声と共に聞こえて来たのは、聞くにたえない激しい罵声だった。


『バーカ!!俺らから、そう簡単に逃げられるとでも思ってんのかヨ?!

誰が逃がすか!!

てめぇの様な聞き分けの悪いヤツは、俺らが、うんと可愛がってやるから、遠慮すんなヨ!!』


ドカッッ―ー‐


『ゲフッッ‥‥ガハッ‥‥‥。

た‥たす‥‥けて‥‥‥。』


“助けて”と言った少年の、その声に、

無視して通り過ぎようとした俺の良心が痛んだ。


ゆっくりと後ろを振り返ると、


5人の若者が、たった1人の少年を相手に、暴行を加えているではないか。


『俺らに逆らうのは100万年早いんだヨ?!

分かってんのか?!オラッッ!!』


バキッッ―ー‐


『はあぅッッ‥‥‥。』


警察にでも電話しようか。


いや、そんな事をすれば、俺まで、この若者同士の争いに巻き込まれるだろう。

ここは、やはり黙って通り過ぎるしかない。


しかし――


心の葛藤と戦っていた俺の存在に、5人の若者の1人が気付いた。


『おい。そこのオッサン。

さっきから、そこで何見てんだよ?!

見せもンじゃねぇんだよ?!』


その若者が、俺に向かってそう言うと、

更に、また別のヤツがこう言い放った。

『ちょうどいい。

このオッサンにカンパしてもらおーぜ。』


つくづく、自分のタイミングと運の悪さを呪った。


こうなれは、もう覚悟するしかなかった。


俺は意を決して、正義感溢れる大人を必死に演じる事にした。


『君達、何があったかは知らないが、

5対1と言うのは、フェアじゃないな。』


我ながら、よく言ったものだと感心したと同時に、


本当の心の中には、言った事を後悔している自分がいた。


『んだとコラァ?!
じゃあ、てめぇが、このクソガキの代わりに、カンパしてくれんのかヨ?!』


更に次の瞬間、俺は驚くべき場面を目の当たりにする事となった。


なんと、俺に向かって、そう言ったヤツが胸ぐらを掴んでいたのは、


ユウだったのである。

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