『ヒイィィィ―――ッッ!!
だ、誰か‥たっ‥助けてッッ!!』
悲痛な叫び声と共に聞こえて来たのは、聞くにたえない激しい罵声だった。
『バーカ!!俺らから、そう簡単に逃げられるとでも思ってんのかヨ?!
誰が逃がすか!!
てめぇの様な聞き分けの悪いヤツは、俺らが、うんと可愛がってやるから、遠慮すんなヨ!!』
ドカッッ―ー‐
『ゲフッッ‥‥ガハッ‥‥‥。
た‥たす‥‥けて‥‥‥。』
“助けて”と言った少年の、その声に、
無視して通り過ぎようとした俺の良心が痛んだ。
ゆっくりと後ろを振り返ると、
5人の若者が、たった1人の少年を相手に、暴行を加えているではないか。
『俺らに逆らうのは100万年早いんだヨ?!
分かってんのか?!オラッッ!!』
バキッッ―ー‐
『はあぅッッ‥‥‥。』
警察にでも電話しようか。
いや、そんな事をすれば、俺まで、この若者同士の争いに巻き込まれるだろう。
ここは、やはり黙って通り過ぎるしかない。
しかし――
心の葛藤と戦っていた俺の存在に、5人の若者の1人が気付いた。
『おい。そこのオッサン。
さっきから、そこで何見てんだよ?!
見せもンじゃねぇんだよ?!』
その若者が、俺に向かってそう言うと、
更に、また別のヤツがこう言い放った。
『ちょうどいい。
このオッサンにカンパしてもらおーぜ。』
つくづく、自分のタイミングと運の悪さを呪った。
こうなれは、もう覚悟するしかなかった。
俺は意を決して、正義感溢れる大人を必死に演じる事にした。
『君達、何があったかは知らないが、
5対1と言うのは、フェアじゃないな。』
我ながら、よく言ったものだと感心したと同時に、
本当の心の中には、言った事を後悔している自分がいた。
『んだとコラァ?!
じゃあ、てめぇが、このクソガキの代わりに、カンパしてくれんのかヨ?!』
更に次の瞬間、俺は驚くべき場面を目の当たりにする事となった。
なんと、俺に向かって、そう言ったヤツが胸ぐらを掴んでいたのは、
ユウだったのである。