「質問」があるなんて、昨日の最終問題あたりだろうか、と思いながら質問室と呼ばれていたパーティションで職員室の一部を間仕切りして作られた生徒と一対一ではなせる場所へ向かった。
質問室に入ると、梨花が椅子から立ち上がって頭を軽く下げた。
「お忙しいときにすみません。少しだけお時間を頂けますか。」
本当にこの子は…と僕が思うくらい梨花は恐縮して、大人みたいな口調でそういったので、僕は余裕がみえる笑顔と声を作るように意識した。
「気にしないで。大丈夫だよ。藍田さんに分からないところがあるなんて珍しいね。」
「先生、私が数学苦手なの気が付きませんでしたか。」
前の日に見せてくれたようないつもの梨花とは違う饒舌に話せる女の子の姿になって、笑いながらそう言った。
「いや、いつも小テストでたまに部分的に間違える程度だし…一学期の中間模試は最後の応用問題が少し違っただけだよね。」
「その最後の問題を間違えたくないんです。」
「意外と負けず嫌いなんだね。」
負けず嫌いを指摘されて図星です、と照れ笑いした姿を見て、もう一つ言おうか言うまいか迷っていたら先に言われてしまった。