思わず“ユウ”と叫びそうになったが、躊躇した。
ここは、敵に親子だと知られない方が、やりやすいと考えたからだ。
実はこの時、俺の脳裏に、ある名案が浮かんだのである。
『カンパ?!何のカンパだい?!
俺も困っている人を見ると、放っておけない性分でねぇ。』
そう言いながら、胸ぐらを掴まれているユウに視線を向けると、
ぐったりとうなだれていながらも、俺の存在に気付いている様子であった。
『俺らのダチがバイクで事故ってよォ。
その修理代をカンパしてやろうゼって話サ。
美しい友情だろう?!
ヒャハハハハッッ!!』
その男が、デカイ口を開けて笑った瞬間、俺にチャンスは訪れた。
俺は、自分のはいていた靴下を脱ぎ、
その男の口に押し当てた。
『グッ‥グハアァァァッッ―――』
男は、ユウの胸ぐらを掴んでいた手を離し、もがきだした。
『てめぇ!!仲間にな‥何をしやがる!!』
それを見ていた別の男が、俺に殴りかかろうとしたその時、
俺は、もう1枚の靴下を、その男の口元へ押し当てた。
『グッ‥グホッッ!!』
男は、一瞬にして、その場へ倒れ込んだ。
その様子を見ていたユウに、俺は、めくばせをした。
――イマノウチニニゲルンダ――
そう――
脳裏に浮かんだ名案とは、
俺がこうしてヤツらを挑発させている間に、ユウを逃げさせようと言う作戦だ。
既にボコボコに殴られていたユウが、
何とかヤツらの目の届かない場所まで逃げ切ってくれれば、
俺にとって、この作戦は大成功なのだ。
『おもしれぇ。
このオッサン、なかなか楽しませてくれるじゃねーか!!』
3人目の男が背後から俺を狙っていたとは、気付かずに、
振り返った俺は、もろにパンチを食らった。
その一発が、かなり強烈で、俺は体を地面に叩きつけられ、
意識を失いかけた。
ダメだ!!
今、意識を失う訳にはいかない!!
まだ、ユウが逃げ切れていないはず。
もう少し、時間を稼がねば――