チンゲンサイ。<24>

麻呂  2009-10-04投稿
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思わず“ユウ”と叫びそうになったが、躊躇した。


ここは、敵に親子だと知られない方が、やりやすいと考えたからだ。


実はこの時、俺の脳裏に、ある名案が浮かんだのである。



『カンパ?!何のカンパだい?!

俺も困っている人を見ると、放っておけない性分でねぇ。』

そう言いながら、胸ぐらを掴まれているユウに視線を向けると、


ぐったりとうなだれていながらも、俺の存在に気付いている様子であった。



『俺らのダチがバイクで事故ってよォ。
その修理代をカンパしてやろうゼって話サ。

美しい友情だろう?!

ヒャハハハハッッ!!』



その男が、デカイ口を開けて笑った瞬間、俺にチャンスは訪れた。


俺は、自分のはいていた靴下を脱ぎ、


その男の口に押し当てた。



『グッ‥グハアァァァッッ―――』


男は、ユウの胸ぐらを掴んでいた手を離し、もがきだした。


『てめぇ!!仲間にな‥何をしやがる!!』


それを見ていた別の男が、俺に殴りかかろうとしたその時、

俺は、もう1枚の靴下を、その男の口元へ押し当てた。



『グッ‥グホッッ!!』


男は、一瞬にして、その場へ倒れ込んだ。


その様子を見ていたユウに、俺は、めくばせをした。


――イマノウチニニゲルンダ――


そう――


脳裏に浮かんだ名案とは、


俺がこうしてヤツらを挑発させている間に、ユウを逃げさせようと言う作戦だ。

既にボコボコに殴られていたユウが、


何とかヤツらの目の届かない場所まで逃げ切ってくれれば、

俺にとって、この作戦は大成功なのだ。


『おもしれぇ。

このオッサン、なかなか楽しませてくれるじゃねーか!!』

3人目の男が背後から俺を狙っていたとは、気付かずに、


振り返った俺は、もろにパンチを食らった。


その一発が、かなり強烈で、俺は体を地面に叩きつけられ、

意識を失いかけた。

ダメだ!!


今、意識を失う訳にはいかない!!


まだ、ユウが逃げ切れていないはず。


もう少し、時間を稼がねば――



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