「拓也、やめろ」
いつの間にか側にきていた
真治が卓也から手を離させた
「お前はそんなんで
満足かよ!
確かにそうだとしても…
簡単に世の中全て知ったように
諦めたこと言うな」
俺の声に周りは振り向く
「俺は例えそんな世界でも
信じたかったんだよ
音楽が起こす奇跡を」
「ふっ、聞いててこっちが
恥ずかしくなる
やめろよ」
「…お前は誰かの音楽に
励まされたことねえのかよ
……悔しいけど…
お前の歌に励まされた奴なんて
世の中いっぱいいるんだよ
その人らにも同じこと
言えんのかよ
お前は人に希望与えてるんだよ
そのお前がそんなんで
歌なんか届くかよ」
「…」
馬鹿なこと言ったと思った
何熱くなってんだよ
本当にヒーロー気取りだ
でも、
俺は愛のこいつらの音楽への
気持ちを知ってる
あの手紙の内容を
思い出したら
叫ばずにはいられなかった
卓也は何も言わない
怒りもせず悲しみもせず
ただその目は相変わらず
まっすぐ俺に向けられていた