アディショナルタイム (3)

阿部和義  2009-10-04投稿
閲覧数[500] 良い投票[0] 悪い投票[0]

 それから暫くして故郷に帰った俺は、後援者の伝手もあって不動産会社に就職する。
 慣れない仕事だったけれど、体力だけが取り柄で人一倍営業に駆け回ったこともあり今では、部下は三人だけでも支店を任されるまでになった。

 奇しくもテレビでは、古巣がクラブワールドカップの決勝を闘っている。


「俺も、もう少しサッカーにしがみついていればよかったかな……」

 すると、隣で息子をあやしながら妻が言う。

「何言ってるのよ。私はサッカー選手だったあなたを好きになったんじゃないわ。だって、あのとき私が手紙を送ったときには、すでにあなたは選手じゃなかったじゃない。いいのよ、今が幸せなら……」

 試合はスコアレスのまま、アディショナルタイムに入っていた。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 阿部和義 」さんの小説

もっと見る

スポーツの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ