こちらのフェンスに向かって野球部2人が帽子を被りながら走ってきた。
奈々「あ、猛…」
奈々がすぐにその野球部員が猛くんだと気づき、フェンスの下のブロック壁にサッと隠れた。
ということは、もう一人の部員は透くんだ。
私はこっそりブロック壁から頭を出して覗いた。
春(透くんって野球部だったんだ…。)
野球帽を深く被っていて鼻と口元しか見えない。野球のユニフォーム姿が新鮮で、さっき掃除の時間に話していた人と同一人物だと思えない。
私がしばらく透くんに釘づけになっていると、野球帽の下の透くんの目がチラっとこちらを向いた。
私はなんだか恥ずかしくなって、奈々と同じようにサッと頭を引っ込めた。
心臓がドキドキしてる。
奈々を見ると、同じように両手を胸元に置いて固まっている。
するとフェンス越しに猛くんと透くんの会話が聞こえてきた。
猛「オレもうダメかも…。自信ねぇよ。」
透「んー。」
猛「嫌われちゃったっぽいし…」
透「あきらめたら?」
春(…透くん、もっと誤解が解けるように会話してよ。汗)
隣の奈々を見ると、耳をダンボにさせて、複雑そうな顔をして会話を聞いている。