数日後、俺はゆかの病室にいた
「…ごめん
愛のためになんかしたいって
そう思ったんだけど…」
あの番組は中止になったらしい
今考えてみれば
テレビの撮影でも
なんでもいいから
愛に彼女のすきな歌を
直接聞かした方が
よかったんじゃないかと思う
口にすると後悔しそうで
そんなこと言えない
『ありがとう
愛のこと、考えてくれて。
でも嫌な思いしたんやな
ごめんな』
ゆかの指先が俺の手のひらに
文字を描く
「ゆかが謝る必要ないじゃん
俺こそ何もできなくてごめんね」
彼女は首を振り
俺の右手を握る
ぬくもりが伝わる
言葉はない
でもただ優しさが伝わってくる
俺も握り返す
また細くなったゆかの手を