アキ 8

ゆう  2009-10-05投稿
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女と遊んでいる時は、家のことも将来のことも忘れられた。
その時が楽しければ、それでよかった。

今思えば、いろんな事から逃げたかっただけだったように思う。


俺の周りには『名波総合病院の跡継ぎ』って肩書きだけで近づいてくる女はたくさんいた。

遊ぶ女には困らなかった。


でも…それも長くは続かなかった。


段々虚しくなっていった。
まぁ当然だ。

好きでもない女と寝てるんだから…。


俺は家のしがらみから抜け出せないでいた。


親の期待に背くことが出来ないまま、K大医学部へ進学。



もう…自分の夢も忘れかけていた。

このまま医者になって、病院を継げば何もかも丸くおさまる。

それが一番いいんだ…。



そんな事をぼんやり考えていたときに、あの絵に出会った。

絵画教室の展示スペースに貼られていた一枚の絵。

まるで俺のために描いた絵のように思えた。



男が正面を向いて立っている。

男の前には、男の背丈くらいある高く伸びた草木が生い茂り、広がっている。

その先に見える物は、青空に光る太陽、白い雲。



タイトルは『道』



俺は、本当は、ずっと絵が描きたかったんだ。

その時、自分の夢を取り戻すことができた。



続き



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