――最近彼に会ってない
今ツアーでいろんな所を
まわっているらしい
忙しさでそのうち
私のことなんて
忘れちゃったら
どうしよう
そんな寂しさに耐えながら
彼の歌を聞き
寂しさを忘れようと
もう何度も読んだ小説を
読んでいた
突然右耳のイヤホンが
はずされる
びっくりして顔をあげると
彼がいた
そのイヤホンを耳にあて
「俺らの曲じゃん」
と嬉しそうに笑った
「ほんとに?
わーゆかちゃんありがとう」
彼の横から知らない人が
顔をだした
いや、知ってる
テレビで何度か見た
「ゆかちゃんなんて
なれなれしく呼ぶなよ、直人」
「じゃあ…ゆか?笑」
「殺すぞ」
私なんか忘れて二人は
ふざけあう
つい笑ってしまった私に
やっと気づく
「あ…ごめん、突然来て
勝手に盛り上がって…
えっとこっちは
ベースの直人
ゆかのこと話したら
一緒に来たいってうるさくて…
ツアーで今大阪来てるから
ついでに寄ったんだ」
「…あの」
「あ、そうそう
真治も」
「はじめまして」
背の高い男性が
おじぎした