和枝と石田のことを見届けた勇一は、幸子に礼を言った。
「夕樹さん…ありがとう。協力してくれて」
「いえ…でも良かったんですか?新井さんは、荒木さんのことを…」
「ああ…自分自身の幸せは、自分を慕ってくれた、新井さんと石田さんが、終わってからって決めてたんだ。…それと夕樹さん、君もね」
「私も?」
「ああ…嶋野さんから言われたんだ。『石田さんのことが終わったら、夕樹さんと、自分自身の幸せを、考えてください』ってね」
「そうですか…」
「だから、夕樹さん、早いうちに、自分の幸せを見つけてくれるとありがたいんだよね。まあ、今すぐは無理だと思うから、そうなったら教えてね。じゃあ、俺行くよ」
立ち去ろうとする勇一の腕を、幸子は力を込めて掴んでいた。
「待ってください。それでいいんですか?」
「え?」
「今、言いましたよね。私の幸せを見届けたらって…」
「ああ…。早く優しくて、君を幸せにしてくれる人が現れて、そしたらね。これは、奥村さんの、そして、俺自分の願いだよ」
「荒木さん…あなたは、好きな女性の為に、ずっと…側で幸せを見届けたいですか?」
「もちろん!例え…例え、自分が死ぬ運命を知ったとしても、命ある限りね。
由美に出来なかった分も…」
それを聞いて、幸子の頬に涙が流れた
「ごめん…本心を隠してた。俺は、君が好きだ…奥村さんに由美を託したように…俺は、君のこれからの未来を見届けたいです。一番近くで…」
「良かった…それが聞きたかったんです。私も…荒木さんの幸せを見届けたいです。あなたの一番近くで」
…そして、幸子は、勇一の胸に飛び込んだ。
「俺達は、いろんな事があって、ここまで、きたんだ。…だから、力強く生きていこう。奥村さんや由美の分まで」
「はい」
「そうだ…3通目の手紙…夕樹さん…いや幸子さん、一緒に読んでもらえるかな?」
「もちろん!」
そして、2人は、由美から届いた、最後の手紙を読むことにした。
考えてみると、由美からの手紙を、勇一は、一気に読まなかった。
そうしなければ、いけないような気がしたからだ…
そして、由美からの最後の手紙を開いた。