≫≫
『ぼくのお父さん』
二年二組 西野 心
ぼくのお父さんはとてもやさしいです。
いつもキャッチボールをしたり、テレビゲームをして遊んでくれます。夏には海にもつれていってくれました。料理はあんまりおいしくないけど、お父さんの作るオムライスだけは日本一おいしいです。
ぼくのお母さんは死んじゃっていないけどお父さんがいるから、ぜんぜんさみしくないです。
これからもお父さんと仲良くすごしたいです。
≫≫
それは僕の小学生のときに書いた作文だった。
祖母はこれで僕の気持ちを変えようと考えているのか?
ふざけんなよ!こんなことでッ…
そんな祖母の策略に苛立ち、畳を叩いて怒鳴った。
「こんな昔の物、何処から持ち出してきたんだよッ!!」
祖母はまったく狼狽せず、真剣な表情をしている。
「…何処からも持ち出してなんかいないよ。この机の上に置いてあったんよ。」
「えッ…!!」
なんでこんな物がここに置いてあったんだ?
誰が…?
何の目的で…?
――理解不能…
「…たぶんあの子、毎日この作文を読んで、その頃のことを思い出していたんだろうねぇ…」
祖母は優しく淋しい顔をしていた。
作文をよく見てみると所々文字が水に濡れてぼやけたようになっている。
――涙の跡だ。