いつもは俺の言葉しか
聞こえない病室が
今日は賑やかだった
不意にゆかが時計を見た
「あ、愛のところ行く?」
愛の病室に行く時間は
いつもだいたい決まっていた
俺らは病室をでて
愛のもとへ向かう
廊下を歩く俺の隣に
珍しくゆかがぴったりと
くっつく
「今日は珍しく
甘えてくるね
寂しかった?」
俺の顔を見ず
まっすぐ前を見たまま
うなずく彼女から
寂しさが伝わってくる
「あんまりこれなくて
本当にごめんな」
俺の腕に絡む彼女の手に
力が入った
「…なあなんかギターの音しない?」
直人の声で4人は立ち止まり
耳をすます
「本当だ
しかもこの曲聞いたことある…」
愛の病室に向かう足は
早足になった
ギターの音は確かに
愛の病室から聞こえる