ピロリパラリロ…
その日、彼は携帯が鳴る音で目がさめた。
誰ダ?
携帯の画面には、ここ半年目にする頻度が急速に増えた名前が表示されていた。
[今日、暇?暇だったら遊びましょう?]
メールの相手は彼の交際相手からだった。
彼は了承のメールを送ると布団をでた。
実のところ彼は休日に外出するのは好きではない。友人に誘われても、たいていは何かしら理由をつけて断っている。しかし………
アイツノ誘イジャ仕方ナイ
ピロリパラリロ
服を着替えているとまた携帯がなった。
彼女の部屋に来るように、という旨のメール。
彼はそれを確認すると携帯をポケットに突っ込み、カバンを掴んで部屋を出た。
雨。
灰色の世界に降る黒い雫。
扉を開くと、雨が降っていた。短く嘆息すると、傘をつかんで扉を閉める。
鍵をしめると彼は歩き始めた。
境界線をまたいで。
自分の世界をはなれて。
彼は歩きながら今から会う相手の顔を思い浮かべた。
世界が、少し、暗くなった気がした。