白黒ー其ノ貳

紫希  2009-10-06投稿
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−半年前−

彼と彼女がであったのは校舎の屋上だった。


大学に入ってふた月。

大学生活では高校の時に比べて空白の時間が格段に増える。

一人暮しを始め、友達も少なかった彼は、出口のない思考の末、屋上のテスリをのりこえるにいたった。



「何をしているの?」

彼が生涯最後の一歩を踏み出そうとしたその時、首筋に白い声がふきかかる。

振り返ると、鼻先が触れるほどの至近距離に女の顔があった。

「ねぇ何をしているの?」

誰ダ?コノ女?

彼は落ちついた声でこたえる。

「少し、見たことないの世界を見に行こうと思って」

「そう」

少し頷くと女は一歩下がった。

「それはどこにあるの?」

「わからない」

彼は初めて目の前に立っている女の姿を視認した。

腰までのびた引き込まれそうなほど黒い髪。それと対象的に色素を全く含んでいない白い肌。

「わからないのに飛ぶの?」
「わからないから飛ぶんだ」
長い四肢は病的に細く、端正な顔には薄い微笑がうかんでいた。

「そう」

女はそう呟くと、ゆっくりとテスリをのりこえた。

ナニヲ考エテルンダ?

「なら貴方に付き合うわ」



………エ?

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